上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。



    ぼくの手は、ふつうの人の使うのと、ちょっと違ってた。
    地球上の人間の10分の9は
    右手を使うのが得意だった。
    ぼくは右手を使うのが、すごく苦手で
    右手ではほとんど、なにもできなかったんだ。というか右手を
    使わなければならないと言われなければ
    右手を使うことなんて、考えもしなかった。

    ぼくは生きてる間、ちょくちょくそのことについて
    咎められなければならなかった。
    「どうして右手を使わないんだ!」「右手を使え!」
    「向きが逆だ!」「どうしてお前がやると向きが逆になるんだ!?」
    工場で、ベルトから流れてくるもの、段ボール箱の在庫
    あの人たちの手順どおりにぼくがやると、いつも逆さまに
    できあがった。笑ってくれるといいんだけど人間てそんなとき
    笑ったりは、してくれないんだね。おれの並べてる食器の向きは
    死人の配置で、おまえの使っている手は
    まちがいなんだって、おれはもうだれもいないから左手でなんでもするし
    喰うけど、字を書くときだけは右手になった。
    もうだれも見てないのに、直らない。もう普通の手にしていいのにさ、ところで
    どうしてあんなにみんな、ぼくの手を叱ったのか
    おしえてくれないままだった。
    そういえば、左手を使う人間は器用だとかあたまいいとかいう噂は流行ったけどぼくは平凡で
    何の才能にも、恵まれなかった。
    ただみそ汁をこぼさないようにしていたかっただけだけど
    ふしぎだね、許してはもらえなかった。
    おれは豆を夜中の夜中まで皿から皿に右手で箸を持ってうつしているとき、
    右手がふるえて、おとしてしまうんだ。
    父さんが怒って、酒を飲みながらつまみ喰ってるときに。
    左腕がなくなっちまえばみんなにおこられないですむのにとおもって、いじけてた。
    おれはなんでみんなと同じ手が上手に使えないだけでおこられてしまうのか、
    みんなの信じたいものが
    わからないままだった。10/13
    スポンサーサイト



    今日風呂の中で、いい音楽をおもいついたけど
    しゃべってるうちに、忘れちゃった。
    いいミュージシャンになれるとおもったんだけど
    こんなんじゃ、無理だね。とても、無理なんだ。
    ここではその音楽をきいてくれるものもいないけどね、それに
    音楽をつくるものがないよ。
    ぼくのあたまの中でいい音楽が一度きり
    何度かリフレインしただけだった。
    鳴り響いてた。あたまの中に、すごくいい音楽が
    ぼくにはそれを一緒に、奏でる仲間がいなかった、それに
    楽器店がなかった、それに、それを買うお金もなかった。
    自分の声に、たよろうとしたんだ、でも そんなものじゃ こんな音は
    つくりようがなかった。そんな音がした。

    じゃあ、ぼくはそんな音をあたまの中にひびかせながら
    ここに立っているしかないだろう?
    ずっとみているんだ、むこうを、でもだれにも、おまえたちにも
    それはきこえない。その音が
    ぼくのあたまの中で鳴り響いていたとしても。10/13
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。