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    カラスが飛ぶと、翼から
    棒を振り回したような音がする
    なんて、生まれてから今まで、知らなかった。
    空に雲がほとんどない。
    田んぼに出てしゃがんで、ひとりごとを言った。
    脳みその全体のうしろに、うっすら
    死んだ猫がうつってて、消えなかった。
    ひとりごとをいってるあいだも
    何にむかってしゃべっているのか
    わからなかった。
    知ってたものは、何もかもなくなって
    持っているものも何もかも消えた。
    周りにあるものは知らないものばかりで
    ぼくを知らない顔してみてる。
    みんなそれぞれ、自分の大事なものを持ってる
    それだけ守ってる
    おれはその中にはいない
    そしてなにも持っていない
    おれがなんで田んぼの中にいるのか
    なんで田んぼの中でひとりでしゃべりつづけてるのか
    だれにも理由がわからない
    理由のわかるやつがいなくなってしまった
    おれがなんで田んぼの中にいるのか
    なんで田んぼの中でひとりでしゃべりつづけてるのか
    もうだれにもわからない
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    タトゥーを入れてないシリアル・キラーについて
    頭のいい人が知りたがってた
    ぼくの中にいるシリアル・キラーだったら
    タトゥーを入れない理由もわかる
    今のぼくに飽きたあとも、また別の誰かになれるように
    ぼくは体にしるしをつけない

    ずっと、自分を迷い続けて
    自分がどこにもいないことを知った
    体の中で何度も入れ代わって
    すべてを作りかえたがった
    さっきまでの何もかもを否定して
    急にまた、作りかえたがる

    ロングヘアーの女の子が、
    髪を切った自分にうんざりしている
    黒髪の優等生が
    髪にブリーチを塗った自分にうんざりしている
    だから、消えない印が残せない
    そのくせ、トラウマだけはたっぷり
    頭の中に消えないである



    2011年10月26日の夜死んだ。
    猫のイチゴ。
    2002年8月の夜、ゴミステーションに捨てられている袋が鳴き出したから見に行ったら
    袋じゃなくて小さな白い猫だった。
    そこから8年と8ヶ月暮らした。
    仕事の都合で引っ越すことになった。猫と暮らすのが禁止だった。
    早く違うところへ行くことにした。少し遠いところになったけど、
    そこで、許可を取って、迎えにいくことにした。
    その間は実家で母さんが面倒を見てくれた。

    母さんは2011年10月26日の夜、イチゴを外に出したまま仕事に行った。
    帰ってきてからイチゴが道で死んでるのを見つけた。
    母さんは2011年10月27日の午前0時14分に受話器を手にとって番号を打った。
    それから叫んだり泣いたりした。
    車に轢かれて死んだ。あんなことするんじゃなかった。と言ったりした。
    それをきいてた。

    電話が終わって、すぐに時間が経った。
    一瞬だけ叫んで泣いたあと静かになった。
    それからずっと思い出したことを喋ってた。
    2回鐘が鳴ってるのが聞こえた。
    一人で勝手にずっと、イチゴの話をした。耳の中がびしょびしょになった。

    拭いても拭いてもびしょびしょになった。
    鼻水も出た。
    寝苦しかった。猫を抱いてる真似をしながら寝た。
    夢を見た。イチゴはいなかった。
    たくさん猫がいたけど、子供のうちに死ぬ猫や、いろんな死に方をする猫がいて
    それを見ていた。

    朝、だんだん目が覚めてきた。猫の真似をした。
    平気だとおもった。
    布団から出ると、駄目だった。
    喋れないし、顔がゆがんでしばらく元に戻らなかった。

    2003年自分が死ぬ前に、人に伝えたいことがあるとおもって、なにか書き始めることにした。
    ペンネームを決めようとおもって、横にいた猫の名前を自分につけた。

    一期



    あの日もこんな音がしてる日だった。
    外に出て、雨に打たれて歌ってた。
    どっちかというと傘をさすより、雨をかぶっているのが好きだった。
    いろんな人が通り過ぎたけど、何も気にしていなかった。
    完全に子供だったから、芸術家のこころを持ってた。その頃は持ってた。
    ずっと踊りながら歌った。傘は
    雨をきれいにみせるための道具だった。
    傘に当たってるときの雨の音はいい音だった。
    勝手につくった歌をうたいながらそこら辺を歩いた。
    いったりきたりしてうろついた。
    家をなくすのがこわいから、家から離れすぎないように気をつけた。
    ここの気持ちは大人になるたびに大きくなった。
    歌っているときには忘れてた。
    叱られて外に出たのを忘れてた。
    もう帰って来るなと母さんが言ったのも忘れてた。
    母さんが髪を引っ張って痛いから泣いたのも忘れてた。
    何もかも忘れてたけど玄関に来たら思い出した。
    なんて言えば家に入れるのかわからなかった。
    ここにいる間に見つかったら、なんて言えば許してもらえるかと考えた。
    けど全然わからなかった。
    叱られた理由もわからなかった。



    水の流れる音が大きいとおもったら
    雨のながれる音もしてた。
    こうして、
    一生、雨の音が好きだった。
    雨の音がきこえているときには悪いおもいでが
    なかった。
    雨の中に立っている間に、他人をなぐさめる方法をおぼえた。
    むかし、同じことを書こうとして、タオルがなんたら
    と書いたけど、ぼくはタオルのようにやさしくないし
    どこかの母親が子供にタオルをかぶせるときのようにやさしくなかった。
    そういうことは、知らなかった。

    雨の中に立っていると、自分が冷たくなっていくのがいつもわかった。
    でも風邪をひきたいのに少しも風邪をひかなかった。
    風邪が命取りになる病気の子の風邪がぼくにうつればいいのにとおもった。
    ぼくが雨に当たりすぎて倒れたら、しめだした人たちが後悔するかなとおもった。
    しない。する前に、倒れない。ずっと、倒れない。何があっても
    倒れない。ぼくはいつも、倒れない。
    倒れない。元気。誰にも心配を
    かけない。



    帰り道に自転車に乗って、塔を見てた。
    真っ黒ですごく大きいけど、他の人には見えない塔だった。
    町がつくった箱ものの隣に建ってた。
    その中に入る時間はなかった。いつも仕事に追われていたから。
    まちがえた。帰り道には見えてたけど、行くときにも見えてた。
    帰り道はいつも半分朝だった。中に入りたかった。そのことを詩人に話したら
    空想力があるって言われた、けどちがった。
    ぼくはそれを話すのに、ドイツ語をおぼえたがってた。
    それに、塔に影響されて、黒い表紙の大きな本をつくったけど失敗した。
    空想してたんじゃない。腹の中にそれがあった。
    いろんなやつが住んでた。それはみんな自分の分身だった。
    中に入りたかった。仕事にいくのがこわかった。
    でも全部捨てて、仕事に行かなければならなかった。
    お前は恥ずかしい人間ていうから、
    みんないじわるだった。毎日、泣きながら帰っても、
    友達にも、会え…いなくて、はずかしい人間って
    腹の中にこんなものがいっぱいあるからそういうのか。
    ちっとも悪いなんておもわなかった。塔の中にいくから、
    ほっといてほしかった。ぼくのどこが、恥ずかしい?

    「わたしたちの言っていることは、あなたにとっていい薬になるのよ。」
    「苦くない薬ばかり飲もうとしないの!」と彼女達は言った。
    オブラートに包んでなくても、効く薬ならなんでも、飲むつもりだった。
    その中に効く薬なんか一つもなかった。毎回、腹が痛くなるばかりだった。
    毒なんじゃないのか?腹がいたくなって便所へ行くたびに腸の粘膜がごっそり抜けた。
    彼女も彼も、そんな病気は信じなかった。

    すごく痛かった。はやく自転車に乗るために、這って玄関に行った。
    薬は全然効いてなかった。何もかもが悪化した。
    夜、天井をじっと見て、一晩中起きていた。天井が回ったり、声が聞こえたりした。
    急に吠えて、泣き出したりした。睡眠薬を飲んで、無理矢理眠るようになった。
    塔が消えていくのを感じた。見なくてもわかった。
    腹の中にあったいろんなやつが消えていって、何も言わなくなった。
    これはほんとうに、いいことなの?ただの無害な、いいやつらだったのに。
    ある日あの人たちはぼくのぐったりした様子を見て、ジャンキーと呼んだ。
    その頃のぼくは毎日顔がしびれてうまく喋れなかった。
    毎日睡眠薬を飲まないとどうしても、眠れなかった。
    彼女が二年前、ジャンキーになって消えた女の子の話をしてた。
    おもしろそうに笑ってた。けど怒ってた。
    正しい道に導いてあげようとしたけど、逃げたと言ってた。
    自分が二人目になるのがわかった。
    ぼくにはもう塔が見えなかった。



    数学に則って、バランスを考えて、音に調和を持たせて
    これっていいことのような気がしたけど、あとで考えるとそうでもない。
    三回も眠ろうとしていた。自分の葬式のときの歌をいまから歌っておきたかった。
    白い菊の花に囲まれて、その歌を、きこえない耳できこうとしてた。
    いったい何がそんなに共感を呼んだのかわからない駄文が生きていてたった一つと、
    思い入れの強い割に誰の心にもひびかなかった言葉と今までのなりゆきを
    大事そうに抱いて。箱ごと川に流されていく自分のことをおもいうかべた。
    自分を信じ込むことができる高いテンションが欲しかった。
    抑制すれば受け入れられると信じた。
    死は必ず来ると伝えておくよ。
    誰かを呪ったりしなくても、嫌なやつもみんな死ぬ。
    いったい何に利用されて命を削ったのか、あとになってみないとわからなかった。
    ただただ、スポンジみたいに評判を汚して消えるのを繰り返した。
    悪人の目にも、邪悪でないものは、邪悪にはうつらなかった。このくらい汚れても
    汚くないものは汚く見えなかった。そして、汚く見えるものは汚いんだった。
    みんな自分によく聴けば、わかってるはずだった。



    母さんは、怪物もつくらず、まともな人間もつくらなかった。
    天才や、立派なこどもをつくろうとして。
    行く手を遮った人達。肝心な話は決してしなかった。
    社会人と常識はモラルより利益のためにあることを
    絶対に、おしえなかった。

    トイレにとじこもるのが癖だった。押し入れにも入った。
    あだ名はドラえもんだった。
    ぼくの周りに皮膜をつくるため、孵る前の繭にもどるため
    ぼくは外の世界に行くと、壁が汚くて暗いところにいた。
    物理的な血しぶきが上がらないことに不満がってた。ぼくは、
    血が出た血が出たといったけどだれにも見えない血ばっかり
    出たからまるで嘘つきみたいだった。
    こんなにぶつけたのはいつくらいぶりだろう。
    殴られすぎると頭が働かないから何も言えなくなることをぼくは知ってる。
    毎日を、精一杯、生きてと誰かが言っていたのが頭に残っている。
    いつ死ぬかわからないことをいつも考える。
    明日にも死ねるかもしれないしって、手首を切っている人に言う。
    暗く沈み込んだ人たちだけが悪いだなんていう理屈は、未だに全然信じていない。
    壁が汚い。お前のせいだって言うやつの心の中にある壁が何を守ろうとしてるのか知ってる。
    でもそれが全く不毛なことを守ることになるのも知ってる。



    きっとあの1つ1つで狂っていったのだとおもう。
    でも脳は、1つ1つの積み重ねが思い出せないでいる。
    妹は「あのとき、ひどいことを言った」と言ったけど、おもいだせなかった。
    「ひどい泣き方だった」
    「そんなに泣いても生き返らないって言った」
    そんな種類の言葉はいっぱいもらいすぎて、誰にもらったのかおもいだせない
    でもいつもおもってた
    「また誰かを怒らせたみたいだ」
    ぼくは自分がどうせわざとみたいに力一杯泣いてたんだろうとおもう。
    妹だって他の人間だってそれを見てイライラした。
    そのときは、白いコンクリートの上にいた。
    石が混じってざらざらして割れやすいやつ。

    そこにいたほとんどの人がわざとらしいとおもったにちがいない。
    おもわなかったとしたら父さんくらいだ。
    空を分厚い雲が覆って、薄暗い日だった。脳内記憶では。
    もし晴れていたとしても、頭の中では曇りだった。
    無視されているぼくのために来た犬だった。誕生日に
    この日は泣いてもいい日だった。3月18日
    受験に合格した日だった。
    おもいだせないけど、たぶん、泣いてるときに他の鬱憤も混ぜた。
    泣いても怒られない日だったから、他の日に我慢した分も混ぜた。



    母さんに日記を読まれないように、出来の悪い英語で日記を書いた。
    めんどくさいから途中からは、ただのローマ字だった。
    母さんには英語で書いてるようにしか、見えないみたいだった。

    日記を読まれたくないのには理由があった。
    ぼくは自分を四つに分けてた。
    一人は感情がなくて一人は悪魔のように凶暴で一人は天使のように弱虫だった。
    そしてもう一人は、自分を精神病患者だと信じてた。

    理想の自分三人と、ほんとの自分が一人いた。
    ぼくは四人で一日ずつ、交代して日記を書いた。
    毎日自分を慰めた。自分を慰める必要に事欠かなかった。その日記を捨ててしまったけど、自分を怒ったり嫌いになったりもした。自分で自分と喧嘩して、あやまって仲直りもした。
    誰もいないときには、一人で会話した。

    早く母さんに気付かれて、病院につれていかれて薬が飲みたかった。
    母さんは精神病を信じなかった。
    精神病患者をきちがいと呼んだ時代の人だった。
    自分のこどもをきちがいにしてしまったとはおもいたくなかった。
    交換日記は長くは続かなかった。
    ぼくはただビリー・ミリガンになりたくてそれをやっただけだった。
    気付かれて病院に行きたかった。自分が何人にも分裂してくれたらどんなにか便利だろう。
    もっと病気になればいいのに、ちっとも病気にならなかった。
    意識がはっきりしていてうんざりした。倒れたいのに倒れなかった。
    ぼくは分厚い日記帳に、残りの三人の名前ばかりを毎日書いた。
    彼らばかりに日記を書かせた。どれにもなれなかった。
    ぼくは自分が誰なのかわからなかった。いつも
    他の誰かになりたかった。
    このまま自分でいることにだけは我慢がならなかった。
    他の誰かになればうまくやっていける気がした。
    自分のままでやっていくには、世の中はあまりにも理不尽に見えた。



    見つかるべき人に見つかるための、絶妙な幸運を必要としてた。
    表現はみんな必要としてた。表現と人はみんな。
    同じことをしてても好きなバランスがあった。

    そしてぼくたちはぼくたちの中に見つけた幽霊を
    キーボードを机にぶっ刺した。
    わたしたちのお母さんって、冗談が通じない人なの?って悩んだ。
    不条理な文章はいろんなところで見つけた。
    ぼくの心臓を持っていってくれるようで持っていってくれない
    なぜなら、それは、いつも楽しそうで
    仲間に恵まれていて楽しい人の文章だから。
    孤独な爆発を知っている成功しない物書きは、人殺しだけに見えた。

    全然知らないひとたちが、ぼくを誰かも知らないで
    ぼくが書いた文章を読んでるのを知った。
    そして、そんなもの別に
    内容が良かった訳でもなんでもなかった。ただ
    じぶんのお気に入りの大好きな人が
    たまたま見つけて気に入ったみたいにしてたから真似をしてただけだった。
    そこに、野菜がなんたらとか、生産者がどうたら、とか書いてあった。
    どうでもいいことだった。
    つくった人間がどれだけ頑張ったかなんて、どうでもいいとおもった。
    ただぼくはこれを、地面に埋めたかった。それか
    長く長く文章を書いた、字だらけのノートがひとかたまりになって
    ただの置物になるのを必要としてた。
    たまに開いて読んでみると、自分でもすかり忘れてしまっていたことが
    びっしり書いてある。



    笑ったことある?昨日、腹が痛かった
    すごく痛かった、ひきつって。何をはなしたらそんな風に
    なったとおもう?母さんが
    人が真剣にはなしてるときにかぎって返事もなにもしなくて、
    ふとみると、いつも話をきかずにはなくそをほじってるのを
    知ってるか。と妹に言ったらこうなった。

    妹が”ほんとに!いつもそんなとき、はなくそをほじってる!”
    ”それで怒りを通り過ぎて母さんの鼻の穴が広がることをいつも心配してるんだ”といった。
    母さんの仕業は鼻のもっと奥に更に穴があくレベルよ!

    そんなときの母さんの目はぼんやりして、なにも見てないみたいだ。
    テレビのほうを見てるけど、目がテレビよりずっと前のところで止まってる。
    ”無心になってる。””無我の境地だ。”
    ”無我の境地になってはなくそをほじってる。”とぼくは言った。
    むしろ母さんははなくそをほじることで自分にとってはそれが
    すごくどうでもいいことなんだということを如実に表現しているようだった。
    そしたら、それをおもったときに腹がひきつってきて、
    しゃべれないようになった。ぼくは、ひきつりながらおもいだした
    ”これは、犬がガンになるかもしれないこととはまったく
    関係ないはなしだ”
    そうすると、余計に苦しくなった。
    なんでこんなに苦しいのに、余計に苦しくなるようなことがおもいうかぶのか
    もっと苦しくなることがおもいうかべばいいのに。だめだ。こんな感じだ。
    おもしろいことを考えるな。おれを殺す気か、やめるな、もっと苦しみたいんだ
    やめろ、苦しい。もっと笑いな

    けど、物事にはピーク来て終わりが来た。
    これを伝えようとしてるときにはおもいだしてほんの少し笑うだけだ。
    いったい何が違うんだ?すごく腹が痛かったのに。
    あと、自分の笑い声で、妹が笑っているのかどうかあんまりわからなかった。
    妹が電話してきた理由は、自分の犬がガンになるかもしれないのが怖いからだった。



    人とはなすのはおもしろい。ぼくは人とはなすのは怖いけど
    人とはなすと内側に敷き詰められた石みたいなものを
    一瞬覗き見ることができる。
    焼けた石や欠けた石やひびが入ったのがほとんどで
    きれいなまるっこいのは少ない。ここが川原だったら
    飛び石は拾えない。だれかには、おれの中に敷き詰め
    られた石も見えるんだろうか。敏感な人たちはやってくるたびにぼくに
    さわって痛みを感じるっていう。たしかにぼくは静電気持ちで
    車のドアにいつも感電する。冬場は服を着替える
    たびに髪が逆立って、同じ性質の母さんに
    触ると火花が散って痛いから近寄れない。
    石は煮えたぎっていて壊れやすく、ほんとは芋のように脆い。



    もうすぐ死ぬとおもったほうが楽に生きられる。
    そういう考えはよくないってよく人に言われるけど。
    長く生きるんだとおもうと嫌になってくるんだ
    でも死ぬのは怖いからインターネットで死体の写真を探してる。
    死体の写真を集めてじっと見てる。
    ともだちが死んでから、死体の写真を集めはじめた。
    昔殺人鬼になりそうだったとき
    殺人鬼が殺した人の写真を見た。
    悲惨な死に方だった。
    逆さに吊るされて腹を生きたまま裂かれた自分を想像したら
    自分にはどっちもできないってわかった。
    苦痛が足りないのかとおもった。
    精神は、逆さに吊るされて腹を裂かれていたし
    一晩中家の裏の松の木にくくられたりしてたけど
    それでもまだ足りてなかった。
    でもそれも違うことに気がついた
    魚の内蔵を引きずり出すくらいで
    すっかり残虐さに整理がついた。
    魚の目玉をみたら、罪悪感にちっちゃい火が点いた。
    我慢して痛めつけるためか
    自分を大事にしすぎるせいか。



    生まれたときのことをはなしたいけど、うまくはなせない。
    生ま…たしかに、だれもきいてない。きいてるのは、木とか
    草とか土とか、水蒸気とか、窒素とか、酸素とかだけ、だけど
    生まれたとき、息をしてなかったからって、なんだ。

    どっかに、ほんとに話したいことが隠れてるはずだとおもう。
    いったい…ぼくの脳みそは、ほんとにのろまだ。
    どんだけのろまだと嫌になる。これじゃ腐りかけの肉塊だ。
    生まれたときぼくが息をしてなかったって話をしてたときの母さんは、
    なにを言いたかったかのかを考えると、苦労話だった。
    父さんに見放されて、一人で病院に産みに行った子供が酷い難産で、
    散々、長時間苦しんだあげくに、出てきたら息をしてなかった。
    ”あたしがどんだけ、あんたを産むのに、迷ったり、決心したり、
    したとおもってる?なんで息をしないの?”
    って、そうおもったみたいだ。
    おれは母さんにそういうおもいをさせて生まれてきたんだ。
    別に、わざと胎盤をのどに詰まらせようとしたわけじゃないけど。
    ただ勝手にそうなって、出てきたら息ができなくなってた。
    そうだな、特別だ。特殊だ、おまえは。だからなんだ。そういう自慢がしたいのかって自分が自分に言うけどそれともちがう
    せっかく息を吹き返したけど、母さんの望む形には育たなかった。そういう自分に失望してるとか…なかなか近いけど、
    そんなにきれいな話でもない。

    いろんな母親が、子供を産んだときの話をした。
    彼女たちはまるで我が子が生まれたことを、人生最大の喜びのようにおもいだしながら話してた。
    母さんは…まるでそうじゃなかった。
    全然、ハッピーなできごとなんかじゃなかった、というように、苦しそうに、思い出話をした。
    きっと他に、大事な、重要なことがあったんだろう。そんな気がする。

    息を吹き返したから、生きなくちゃならないって感じで生きた。
    あのとき息が止まったままだったら、母さんを安心させてあげられただろう。
    こんな大変なものを、
    背負わなくて済んだ。そんな気が、ずっとする。
    生まれて来るべきじゃなかった、とかそういう、自分がでかい存在になる話じゃない。
    おれは喜びと一緒には生まれてこなかったという話がしたかった。
    苦しみと、嫌な気持ちと一緒に生まれてきたという話。
    トイレのうんこみたいに、爽快感を与えるわけでもなく。



    電線て知ってる?
    電線の上に、トンボがとまってた。
    そんときおれがおもったことは、トンボは寒いから
    ひなたぼっこをしてるんだってこと。
    だから頭の中できいてみた
    「おまえも近頃寒くなってきたの?」って、そしたら
    トンボはちょっとだけ動いて、
    また電線にとまった。
    おれはそのまましばらくじっと
    それを見てたけど、
    まるで自分がひだまりくらいあったかい人間になってるような気分がした。
    おれは服を着すぎてた。
    すごく、暑かった。



    ぼくの手は、ふつうの人の使うのと、ちょっと違ってた。
    地球上の人間の10分の9は
    右手を使うのが得意だった。
    ぼくは右手を使うのが、すごく苦手で
    右手ではほとんど、なにもできなかったんだ。というか右手を
    使わなければならないと言われなければ
    右手を使うことなんて、考えもしなかった。

    ぼくは生きてる間、ちょくちょくそのことについて
    咎められなければならなかった。
    「どうして右手を使わないんだ!」「右手を使え!」
    「向きが逆だ!」「どうしてお前がやると向きが逆になるんだ!?」
    工場で、ベルトから流れてくるもの、段ボール箱の在庫
    あの人たちの手順どおりにぼくがやると、いつも逆さまに
    できあがった。笑ってくれるといいんだけど人間てそんなとき
    笑ったりは、してくれないんだね。おれの並べてる食器の向きは
    死人の配置で、おまえの使っている手は
    まちがいなんだって、おれはもうだれもいないから左手でなんでもするし
    喰うけど、字を書くときだけは右手になった。
    もうだれも見てないのに、直らない。もう普通の手にしていいのにさ、ところで
    どうしてあんなにみんな、ぼくの手を叱ったのか
    おしえてくれないままだった。
    そういえば、左手を使う人間は器用だとかあたまいいとかいう噂は流行ったけどぼくは平凡で
    何の才能にも、恵まれなかった。
    ただみそ汁をこぼさないようにしていたかっただけだけど
    ふしぎだね、許してはもらえなかった。
    おれは豆を夜中の夜中まで皿から皿に右手で箸を持ってうつしているとき、
    右手がふるえて、おとしてしまうんだ。
    父さんが怒って、酒を飲みながらつまみ喰ってるときに。
    左腕がなくなっちまえばみんなにおこられないですむのにとおもって、いじけてた。
    おれはなんでみんなと同じ手が上手に使えないだけでおこられてしまうのか、
    みんなの信じたいものが
    わからないままだった。10/13



    今日風呂の中で、いい音楽をおもいついたけど
    しゃべってるうちに、忘れちゃった。
    いいミュージシャンになれるとおもったんだけど
    こんなんじゃ、無理だね。とても、無理なんだ。
    ここではその音楽をきいてくれるものもいないけどね、それに
    音楽をつくるものがないよ。
    ぼくのあたまの中でいい音楽が一度きり
    何度かリフレインしただけだった。
    鳴り響いてた。あたまの中に、すごくいい音楽が
    ぼくにはそれを一緒に、奏でる仲間がいなかった、それに
    楽器店がなかった、それに、それを買うお金もなかった。
    自分の声に、たよろうとしたんだ、でも そんなものじゃ こんな音は
    つくりようがなかった。そんな音がした。

    じゃあ、ぼくはそんな音をあたまの中にひびかせながら
    ここに立っているしかないだろう?
    ずっとみているんだ、むこうを、でもだれにも、おまえたちにも
    それはきこえない。その音が
    ぼくのあたまの中で鳴り響いていたとしても。10/13



    今日はいい天気だね。仕事もなにもしなくていい
    争いもない生活って、ふしぎだな。だれもいなくなっちまったんだ。
    ニワトリが走ってるんだけど、穫れないよ。ウサギもとれない。
    あいつら、あいつらばっかで仲良くして、ちっともおれに
    かまってくれなくなっちまった。こそこそしながら、いそいそと
    かくれていくんだ。あいつら、自分で生きていける道をこうなる前から
    ずっと守ってたんだからね。
    おれになんかさわらないほうがいい。
    おれにも、ともだちがいるときがあったんだ。
    ともだちね。
    いるとほんの少しだけ自分に生きててもいいっていえる気がするんだけど
    ほんとはそんなもの、どこにもいないんじゃないかっ
    ておもえるような、幻みたいなもんだよ。10/12



    寝てるときにさ、夢っていうのを見るんだけど。
    人間だけじゃなくて、犬や猫も
    見ているときがあるっていうけど、ぼくは犬や猫じゃないからわからない。
    夢っていうのはいろんなことが起こるけど、ほんとにふしぎだよ、もしかすると
    お前たちにとってはそんなにふしぎなことじゃないのかもしれないけど。

    見たこともない町がなつかしかったり、何回もそこへ行ったり、でも夢のなかでしか
    そこへ行けなかったりするんだ。あと、その町に行くと死にそうなことが起こることがわかってたり、あと、そうだ、このあいだは、
    時間がずっと前に戻ってた。そういえば、自分はもう大人になってるのに小学校に通ってて
    同級生は中学生のときのとかいろいろ混じってるんだけど普通に通ってたり、ああ、そういうときはなぜだかいつも
    遅刻するとおもってるよ。それからぼくなんか
    夢の中に母さんがいると、いつも死にそうになるまで怒鳴られて、
    ぼくはたまに自分の叫び声で目が開いちゃって目からいっぱい涙が出てるんだ。
    でも、そういえばこないだは、はじめて、そんなに怒らずに、言い返したんだ。ただそれだけだけど。

    そうじゃなくて、時間が戻ってた夢のはなしがしたかったんだ。いなくなった恋人がいた。だから、
    2つ前に住んでた部屋の中にいるって勘違いをしてたけど、ほんとうは、見たこともない部屋にいたんだ。
    ただ、ベッドだけしかみえてなかったからそんな勘違いをしたんだとおもう。恋人が、あのころとおんなじように
    ごろごろごろごろしてばっかりいて
    いばっているみたいで、
    おれは、ああ、またここからやり直しになっているのかなとおもったんだ。
    そしたら恋人の腹が、目の前にあって、
    わらってその腹にうずまっていればいいのかとおもったけど、
    おれのあたまのなかには今の恋人がいて、いったい今の恋人は
    どこにいってるんだろう?って考えるけど
    今の時間になっているならぼくは昔の自分みたいになってふるまっていなきゃならないんだろうかとおもって腹のなかに、顔を、うずめたんだ。
    そしたら、むかしと同じみたいで、ちっとも前とかわっていないみたいで、それが
    気持悪くてなにか、悪いことをしてる気がしていやだった。でも周りはなにもわからないみたいでほんとうに、昔のままみたいなんだ。なんか、すごくいやだよ。時間に流されていたよう。
    時間が時間なら何も起こっていないなら自分が平気で元に戻れるみたいで、こころがなにもないみたいで
    もしかしておまえたちはおれにこころなんてものはないって、はじめから、知っているの?10/11



    生きてると時々、そこにいない人の声がするときがあるんだ。
    小さいときには耳の中に小人の声もしてたけど、いつのまにか聞こえなくなった。
    すごく早口で、いつもなにを言ってるのかわからなかったけど
    この間は小さい女の子の声がきこえたんだ。
    死になさいって意味の言葉を言ったようにきこえた。
    人は時々、死になさいって意味の言葉を言うときがあるよ
    たいていはおこってるとき、それから、パソコンの前にいるときは
    王様みたいな気分になりたくて、言うときもある。
    ぼくは母さんにも恋人にもきょうだいにも言われたことがあるし
    知らない人にも言われたことがあるけど、そのときはすごくいろんな気分がしてわけがわからなかった。
    でも、はっきりしてるのは、それはあんまりなりたくない気分ってこと。すごくいやな気分になるんだ。
    でもその女の子にいわれたときは、すごくいやな気分にはならなくて変だった。
    近い未来に死ぬのかもしれないとか、魔法みたいなことを考えたよ。だって
    その女の子の声は、そこにいない人の声だから
    ぼくらはそこにいない人の声をきいたりすると、未来のことを言いにきたのかとか、なにかをわからせにきたのか、とか、いろんなことを考えるんだ。10/11



    人間というのはいろんなところでいろんなものをつくっているものだけど
    この辺の人たちは、こめとかそばとかをつくってる
    今日は新しくできたそばをみんなに一杯500円でふるまう祭りがあった。
    みんなでそばというものをたべるために長い行列をつくるんだ。
    おかずをいっぱいつけてくれるテントとか、
    わさびしかつけないテントとか、いろんなところがあった。
    ぼくはこの辺りで一番評判がいいといわれているテントの行列に
    並んだけど、なかなか食べられなかった。
    たべものを得るというのは
    ぼくらの生きているところではなんでも、大変みたいだ。
    それにみんな飢えているし、飢えてると、人間という生き物は
    ちょっと意地汚くなったり、イライラしたりする
    文句を言いながらいつまでもいつまでも、そこに立ってるんだ。
    ぼくらのテントの人たちは、あんまり働き蟻のようではなかったから、
    インターネットで言うとISDN回線くらい仕事に
    時間がかかって、人間は待ちすぎるとイライラして
    ぎゅうぎゅう押すし、ぼくらはひまだからよそ見ばっかりしはじめる。
    新しいそばというのは半透明で、古いそばよりもぷるっとしていて固い。
    それがおいしいというんだ。ぼくは2つたべたけどまだ、胃の中が
    空っぽに近い感覚がする、それは、燃料を得るために燃料を
    消費しすぎたからだとおもう。ぼくらはたった一瞬の命の中の
    たった一回の食事、口に入れば消化される
    だけのもののために、いろいろな苦労をする、そして
    いつも良い燃料を楽に確保している人間に嫉妬したりする。
    がつがつがつがつしているほうが生き延びれると感じて
    意地が悪くなったりする。それでも、だいたい同じように死ぬ。10/9



    放射能さ、ぼくは発電について考えるけどどっちでもいいんだ。
    ぼくらが怠ければあぶないものがくっついてくる
    あぶなくても怠けたい人と あぶないのは絶対いや がけんかして
    でもそんなこと、しょっちゅうじぶんひとりの中でおこってるけんかじゃないか。
    おれは、どっちでもいいんだ。なったようになるだけ。
    いっつも自分の中でけんかしてるだけなんだから。
    あぶないものから逃げても あぶないものはこの世には、いっぱいあるんだ。どっちかというと、
    完全にあぶない。どっちかというと
    あぶないものだらけ、そして
    便利なものはあぶないものだらけで、
    あぶないものしかないんだ。10/9



    もしも、この世にあるものが、自分と世界だけだったら、
    ぼくは世界に何も言うことがないんだ。とても美しいね
    どうしてぼくらは殺し合って、喰うことでしか生きられないのかい?
    どうしてライオンはそんなにかわいいのに、ガオーといって
    鼻にしわをよせてさ、ガブっとやるのかい、どうして蛇がそんなに
    大きいのかい?どうして くわれるときには痛いのかい?
    おれが痛くなければすぐに喰われてやることができるのに、
    どうして噴火が起こるのかい?どうしてそんなに、
    地球が、うごきまわるのかい?どうしてこんなに広いところに
    ぼくらはうかんでいるのかい?
    もっといい方法がなかったのかい?ぼくが食べることに殺すことに罪の意識を
    感じなければもっと辛くなかったのに、これじゃ、死んじまうほかねえよ
    こんなに、ちっぽけだけど、いろいろ、考えるんだ。お前たちは、
    考えないかい?どうしてみんながみんな、植物みたいに与えることで
    手伝ってもらえるように生まれついてこなかったのかい?こんなに一瞬で
    死んでしまうものにもなにか意味はあるのかい?どこがはしっこなのかい?
    なにも知らないで、死んでいくんだよ。ただ、生きてるだけで、
    いろいろ、考えるんだ。おれをもやしつくす存在でなければ
    火はお湯もわかせないけど、なんでおれは燃える材質にうまれてきたのかい?
    わたしはそこに流れてる水とほとんど一緒じゃないか。でも、こんなに
    考え事をしてるのはなぜなんだ?水も考えてるっていうのか。
    たくさんいうことがあった。10/9



    開き直って怒っているきちがい、になりたいけど、
    そうすると、開き直って怒っているきちがい、のふりになるから
    なにもしないでぼんやりする。えっと、わたしはネグレクテッドといって、
    そのために生まれて、そのまま死んでいく役割を担っているんだ。
    あんまりだれもやりがたらないけど、これは生まれつきだからだれにも心配ない
    ネグレクテッドがいればどんなやつも、安心して生きていかれる。そして
    他人を馬鹿にできる。ネグレクテッドほど、落ちこぼれた人間はいないんだ。
    ネグレクテッドのみじめさには、ハルウララも勝てないほど。
    ネグレクテッドに勝利はなく、ネグレクテッドに正解は無く、泣いても怒っても自殺しても、だれかに受け入れてもらうこともできない。ネグレクテッドの努力は報われることを知らず、ネグレクテッドの希望は達成されることを知らない。



    朝、寝不足を理由に、寝ようとしてた。
    足が冷たくて眠れなかった。空のずっと上のほうから爆発音がきこえた。そして、雨が降り出して、廊下に出て、雨の降ってる様を見た。一日中、雨の音をきいてた。
    昨日のひどい劣等感が去って、とてもおとなしい自分になった。
    いろんな人が構ってくれてたときの自分をおもいだしたんだ。
    そっちのほうがうまくいくって気がしだしてから、おかしくなった。
    架空のおもしろいはなしができたらいいのに、もっと自分を大袈裟に見せられたらいいのに、そしたら誰かが声をかけてくれるに違いない。宣伝のために。
    どこまでいっても宣伝のために。
    心の底から仲間ができないっていう、そういう孤独感から
    自分を曲げにかかった。
    昔のはなしがしたい。そうすればきっとだれかがわかってくれて、自分とその話を混ぜてくれて
    自分の話にすり替えはじめる、そうすれば、この無念はその人の中で生きていられるんだ。



    なにも書くことがない。ネットをぐるぐる回っただけ。なにも心をあたためられることがない。心の弱いひとがあつまって、なぐさめあっているのを見たら、なにかをあきらめよう。
    暗い音楽をきいて、暗いうたをうたって、それから、もっと不幸でいることに気づこう。
    もう戻ってこない自分を、取り戻したがってた。
    素直で明るくて前向きで、元気で生意気で少し自信満々だったあの子は、もうずっと昔に死んで、体に戻ってくることもない。そしてこの精神はおそらく、死ぬときが来るまでずっと、もがき苦しみ続けて
    何年か前みたいに、くちびるがぱさぱさに乾いてる。あの頃よりも、もっと悪くなった。えんぴつを持っても、前みたいに自分を恥じないではいられない。時間がたつほど自分が恥ずかしくなっていく。
    くらべるな。ふてくされたように、鉈で緑の草を、葉を、切りまくっていればいいんだ。伸びた髪を、ゆらゆら揺らしながら古着に身を包んで、ふらふらと、そこら辺を、鉈をぶら下げて、ぶらぶら歩いて、気になるところはなにもかも、切り落としていけばいい、自分も
    切り落としてしまえばいい。



    白いカーディガンを着ているでしょう。雨がびたびた
    降っているでしょう。アスファルトの上に、ひざまずいているでしょう。
    泣いているでしょう。この泣いてるっていうのがいけない
    どちらかというと、ぼーっとしてなくちゃいけない あ、
    そういういかにもショックで放心状態のみたいな顔を
    するのはいけない。だいたい泣こうとして泣いたから
    おかしくなったんだ。
    泣こうか泣くまいか迷うだろう そのときに
    選ぶのがいけない。なにもしなくていいんだとりあえず
    できることは何も無い。水たまりで泳ぎたいなら、泳ぐといいけど
    そうやって誰かに笑ってもらおうなんておもいはじめたらもうおしまいだ。
    水たまりでクロールしているときに、アスファルトで擦りむいて
    人に心配してもらおうなんて考えない方がいい
    擦りむいた血は出しっ放しにしておく。
    そのうち嫌だとおもうのに傷口が勝手にふさがって、血がとまって
    死にたかったのに中途半端にまた助かるんだ そして
    だれもお前のことを、心配したりなんかしない。10/01



    夜になると、昼間よりずっと、そこを流れてる水の音がきこえる。
    あそこなんか藤の蔓が下がってきてて
    そこの水場で作業をしてると
    自分がニンフになったみたい
    誰かが絵にして残してくれないかな
    大根を洗うニンフ、フキをむくニンフ、芋を洗うニンフ
    わたしは、記録に残ることがない。
    だから、くだらない藤の蔓や水場の話を
    ここに書いとかなきゃならないとおもいはじめる。
    みんな自慢が好きだ。とくに
    血筋の自慢をするのが、だから おれは
    どんなにくだらないことでも書き残しておかなくちゃとおもいはじめる
    だれも残さないだろうことをこうして毎日
    だれも興味を示さないであろう、だれも誇りにおもわないであろうことを毎日。
    10/01
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